『5 つの大切なポイント』
チンチラはこんな動物です。 飼育書のような表現で少しお固い文章になりますが、この 5 つのお話は、チンチラさんの命に関わる最初のハードルです。
(1) 基本的には日本の気候は適していません。
チンチラの故郷は、湿度が 0%に近い寒冷乾燥地帯です。そのため、高温多湿や寒暖差がとても苦手な動物です。
日本では気温が上がり始める春後半から夏の終わりまでは、エアコンや除湿機が欠かせません。寒暖差の激しい日本では、温湿度を安定させるために、一年中エアコンをフル稼働させなければならない地域もあるでしょう。
春夏秋冬があるため、冬の寒さにも強くなりえず、日本においては寒さに強い動物と言い切ることはできません。
(2) 非常に長生きします。
チンチラの年齢換算は、小型犬と同じと言われていますが、オーナーである鈴木の実感ではむしろ猫に近いと思っています。
小さな体で犬や猫と同じくらいの長い寿命を持っている動物なのです。
平均寿命は 10 年から 15 年、病気知らずで長生きすれば 20 年以上も生きることができる可能性の高い動物になります。
20 年とは、愛情を持って過ごせば非常に嬉しい時間、でも、軽はずみな気持ちで 20 年の命の責任をとることはできません。
(3) 毎日の砂浴びが大切です。
彼らは、一つの毛穴に 100 本前後の毛を持っています。その触り心地は、1 本 1 本の毛を感じさせないほどにゴージャスなマット感です。
その密度の高い被毛は、もともと彼らの身体を厳しい寒冷から守るためのものでした。そして、身体を保湿するための「ラノリン」という油成分を皮膚から生み、湿度が低いことによる身体の乾燥しすぎを防いでいました。
そのため、余った油を吸着させて皮膚から落とすため、高い密度の被毛のお手入れのために、彼らが生息する場所の地面に多く含まれていた火山灰で砂浴びを行っていました。
また、チンチラにとっての砂浴びは、人間の入浴に匹敵するほどの精神的な気持ち良さがあり、ストレス解消の効果があります。
つまり、高温多湿であるここ日本でこそ、砂浴びは野生時よりも非常に重要です。砂浴びを欠かしてしまうと、心身ともに大きな大きなストレスを抱えてしまうだけでなく、病気の可能性にもつながる危険があります。
(4) 主食は飼い主さんがアレルギーを起こすことが多いイネ科の牧草です。
もし草食動物をお迎えする希望がある方で、いままで一度も飼育をされたことがない方には、まず牧草と動物の被毛に対するアレルギーの検査を強くおすすめしています。
なぜなら、草食動物の飼育を途中で断念されてしまう一番の理由が、飼い主さんや他のご家族からのアレルギーの発症だからです。
お話ししたとおり、チンチラとの生活は 10 年から 20 年と、とても長い年月になります。そこがまさに、チンチラと暮らすことの大きな魅力一つなのですが、万が一重度のアレルギーを発症されてしまった場合には、我慢や愛情で乗り越えられるほどの期間ではなくなります。
砂浴びの砂で喘息を起こす可能性もゼロではありません。
(5) チンチラを詳しく診察できる獣医師がまだ多くありません。
日本におけるチンチラ飼育の歴史はまだ非常に浅く、そのため獣医学も犬、猫、うさぎなどに比べると驚くほどに進んでいません。
いままで飼育者数がそれほど多くなかったために症例も少なく、診察のニーズも低かったために、研究を行うことができなかったというのが実状でしょう。そのため、積極的にチンチラを診察しますという動物病院はまだまだ多くありません。
うさぎや他の草食動物の延長で診察を受け入れてくださる獣医師さんはいらっしゃるようですが、いざというときには、入院治療ができない、オペができない、ということもあります。
そのため、チンチラさんをお迎えする前には、まずはご自身がどんなときでも通える範囲内の動物病院を探してください。そうして、病気になる前に、一度は健康診断や飼育相談で受診することをおすすめしています。
「もっとこれも言った方がいいんじゃないの?」「あれも必要だよ!」というお声が聞こえてきそうですが、少しずつお伝えしていければと思っています。
逆に「初めて方にチンチラの魅力を説明しないの?」というお声も聞こえてきそうですね。
日本におけるチンチラの立ち位置はとても微妙なのですが、ご説明する必要がないくらいこの上なく魅力的な動物です。
お迎えの注意点さえ理解していただければ、こんなにも美しくてかわいくてポジティブで頭が良くて運動神経が高くてお茶目でキュートでモフモフ大使な動物は他にいないのです。
もう一目でその魅力は伝わるのです。だから、お伝えしたいことは、絶対にこの命を大切にしてほしい。
その一生のお手伝いをさせていただくことが、ロイヤルチンチラの一番かなえたいお仕事でもあるのです。